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伊勢物語(百二十五段)

伊勢物語(百二十五段)
  むかし 男 わづらひて 心地死ぬべくおぼえければ

つひにゆく道とはかねて聞きしかど
  きのふ今日とは思はざりしを


昔 男が病気になり このまま死にさうな気持ちがしたので

誰でも最後には行かねばならぬ道とは前から聞いていたが
わが身がさうなるのは 昨日今日といった差し迫ったことと
は 思はなかったことよ


「初冠(うひかうぶり)」の初段より 雅(みやび)に生きて
きた在原業平も とうとうこの世を去らねばならぬ時が
来ました  この段をもって この物語は終ります

こんな言葉がありますね
「本間さまには及びもないが せめてなりたや殿様に」
私なら
「せめてなりたや業平に」

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伊勢物語(百二十四段)

伊勢物語(百二十四段)
  むかし 男 いかなりけることを思ひける折にかよめる

思ふこといはでぞただに止みぬべき
  我とひとしき人しなければ


昔 男が いったいどんなことを思っていた折であったか
歌を詠んだ


心に思っていることをも口に出して言はずに そのままで
やめてしまふのがよいのだ 自分と心を同じくする人など
この世にはいないのだから

伊勢物語(百二十三段)

伊勢物語(百二十三段)
  むかし 男ありけり 深草に住みける女を やうやう
  あきがたにや思けむ かかる歌をよみけり

年を経て住みこし里を出でていなば
  いとど深草野とやなりなむ


  女 返し

野とならば鶉となりて鳴きをらむ
  狩にだにやは君は来ざらむ


  とよめりけるにめでて ゆかむと思ふ心なくなりにけり

昔 男がいた 深草に住んでいた女を次第に飽きかけてきた
やうに思ったのか このような歌を詠んだ


長い年月 通ひつづけてきたこの深草の里を去っていったら
名前以上にますます草深い野原となってしまふだらうか


野原となったなら私は鶉(うずら)となって泣いていること
にしませう その鳴き声をたよりに 狩にだけでもあなたが
来て下さらぬことがありませうか きっとかりそめにでも
来ていただけるでせうから


と女が詠んだのことに感じ入り去って行かうと思ふ心は
なくなったのです

鶉 = うづら
狩 = 仮の掛詞

伊勢物語(百二十二段)

伊勢物語(百二十二段)
  むかし 男 契れることあやまれる人に

山城の井手のたま水手にむすび
  たのみしかひもなき世なりけり


  といひやれど いらへもせず

むかし 男が 約束したことを違へた人に

山城の井手の玉水を手に掬んで約束して頼みにしていたの
に甲斐もない間柄ですねぇ


と言って送ったが 相手の女は返事もしない

山城の井手 = 京都府綴喜郡井手町 木津川に注ぐ玉川
   といふ川もあり 玉水といふ駅(JR)もあります
たま水 = 玉水 水の美称   掬ぶ = 約束する
たのみし = 頼みし 手飲みし に懸けている


新古今和歌集 巻第十五 恋歌五 1367
読人知らず 題しらず

山城の井手の玉水手に汲みて
  たのみしかひもなき世なりけり

伊勢物語(百二十一段)

伊勢物語(百二十一段)
  むかし 男 梅壺より雨にぬれて人のまかり出づるを見て

鶯の花を縫ふてふ笠もがな
  ぬるめる人に着せてかへさむ


  返し

鶯の花を縫ふてふ笠はいな
  おもひをつけよ乾してかへさむ


むかし 男が 梅壷から雨に濡れて退出する人を見て

鶯が花を縫ひつけるといふ笠が欲しい 濡れているであら
う人に 着せて帰らせてあげたひ


鶯が花を縫ひつけるといふ笠はいりません むしろ 私への
思ひ といふ火をつけて下さい その火で笠を乾かして
お返ししませう


梅壺 = 宮中の局(つぼね)の一つ 壷(中庭)に梅が植えて
  あり 梅壺とよばれた

伊勢物語(百二十段)

伊勢物語(百二十段)
  むかし 男 女のまだ世へずと覚えたるが 人の御もとに
  しのびてもの聞えてのち ほどへて

近江なる筑摩の祭とくせなむ
  つれなき人の鍋のかず見む


むかし 男が まだ男を知らないと見えた女が ある身分の
高い人の御もとに ひそかに通っていると 暫くたってから
聞いて


近江の筑摩の祭を早くしてほしい
私に冷淡なあなたの被る鍋の数が見たい

その祭日に土地の女は 褥(しとね)を重ねた男性の数だけの
鍋を被って参詣した といふ


筑摩神社は滋賀県米原市にある神社
鍋冠祭(なべかぶりまつり)は日本三大奇祭の一つ
米原市の無形民俗文化財

近江 = あふみ

伊勢物語(百十九段)

伊勢物語(百十九段)
  むかし 女の あだなる男の形見とて置きたるものども
  を見て

形見こそ今はあだなれこれなくは
  忘るる時もあらましものを


むかし 女が 真心のない男が形見として女の所に残して行
った品々を見て


今となっては この形見の品こそが 浮気で私を苦しめた
あの人そのものになってしまった これさへなければ あの
人を忘れる時も あらうものを


形見 = ここでは死別ではなく 別れに当って残すもの

古今和歌集 巻十四 恋四 (746) には 読人知らず として
かたみこそいまはあたなれこれなくは
  わするゝときもあらましものを

伊勢物語(百十八段)

伊勢物語(百十八段)
  むかし 男 久しく音もせで「忘るる心もなし まゐり
  こむ」といへりければ

玉葛はふ木あまたになりぬれば
  絶えぬ心のうれしげもなし


むかし 男が久しく便りもせずにいて「あなたを忘れるとい
うような心はありません 今からそちらに参上します」と
言って来たので 女は


玉葛が多くの木に這ひまつわるやうに あなたも大勢の女性
のもとへ通って行かれるやうになったので 絶えず続いてい
るとおっしゃる私へのお心に対しても 別に嬉しい気はおこ
りません


玉葛 = 玉は美称  はふ 絶えぬ = 葛の縁語
男に強がったふりを見せているだけです


古今和歌集 巻十四 恋四 (709) には 読人知らず として
たまかつらはふきあまたになりぬれは
  たえぬこころのうれしけもなし

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ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
    この写真は但馬皇女の歌
    人言を繁み言痛み己が世に
      未だ渡らぬ朝川渡る

    をイメージしたものです

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