100番 順徳院
2005/12/13 (Tue) 10:39
なほあまりある昔なりけり
宮中の荒れ果てた古い建物の軒に忍ぶ草が生えている
皇威の衰へはこの上なく如何に偲んでも
偲びつくせない程 隆盛であった昔が慕はしく
思はれるのです
ももしき = 百敷・百の石城(いしき)が元の意味
大宮に掛かる枕詞 之を独立させて「大宮」
「宮中」の意味に用いるやうになった
ここでは後者の意
99番 後鳥羽院の第三皇子
父 後鳥羽院に協力して承久の乱を起こしたが
失敗して佐渡に配流された
藤原定家がこの親子の歌を百人一首の最後に載せて
百人一首を締めくくったのは何故
謎がいっぱいの百人一首 これでオシマイ
一枚札の「む」「す」「め」「ふ」「さ」「ほ」「せ」
憶えましたか? これだけでも憶えますと
百人一首が楽しくなること請合いですよ
99番 後鳥羽院
2005/12/12 (Mon) 12:05
世を思ふゆゑに物思ふ身は
世の中が昔と変って事毎に思ふにまかせないので
世の中を味気なく思ふにつけて
いろいろと物思ひに絶えない身には
とかく人を惜しくも思ひ
また恨めしくも思ったりする
をし = 「愛し」いとおしい「惜し」惜しむ の両方の意
あぢきなく = 味気なく・にがにがしい・面白くないの意
世を思ふ = この世をつまらなく思ふ
承久の乱を起こすも之に失敗し隠岐島に配流された
藤原定家ともいろいろな葛藤があったやうですが
それも私達にとっては「紅旗征戎非吾事」
といったところでせうか
98番 従二位家隆
2005/12/10 (Sat) 12:25
みそぎぞ夏のしるしなりける
楢の木の葉に風が吹き渡りっている奈良の小川の夕暮時は
涼しくて秋の訪れを思はせるやうであるが
この川で行はれている禊の行事だけが
まだ夏であることの証拠なのだなぁ
なら = 奈良・楢の掛詞
藤原家隆
新勅撰集に寛喜元年女御入内の屏風として出ているので
この詞書によって屏風歌であることが分かります
また 本歌は次の二首とされています
八代女王
みそぎするならの小川の河風に
祈りぞわたる下に絶えじと
源頼綱
夏山の楢の葉そよぐ夕ぐれは
今年も秋の心地こそすれ
97番 権中納言定家
2005/12/09 (Fri) 12:08
焼くやもしほの身もこがれつつ
待っても来ないあなたを 今来るかくるかと待っている私は
松帆の浦の夕凪時に海士が焼いている藻塩のやうに
あなたを慕って身も恋焦がれています
「待つ」と「松」は掛詞 「藻塩」と「こがれ」は縁語
藤原定家 小倉百人一首の撰者 83番 藤原俊成の子
この歌は定家の歌ですから待てど来ぬ女性を男性の立場で
詠ったものだとばかり思っていました
ところがこれは万葉集からの本歌取りであり
女性(海少女)の立場での歌であることが分かりました
然し本歌そのものは男性の立場で詠っています
笠朝臣金村
6-0935
名寸隅の船瀬ゆ見ゆる淡路島
松帆の浦に朝凪に 玉藻刈りつつ夕凪に
藻塩焼きつつ海少女 ありとは聞けど見に行かむ
縁のなければ大夫の 情は無しに手弱女の
思ひたわみて徘徊り われはそ恋ふる船梶を無み
95番 前大僧正慈円
2005/12/07 (Wed) 12:16
わがたつ杣に墨染の袖
私はこの比叡山に住んで墨染の袖で
世の中の人を蔽って安全を祈祷しているが
法徳の拙いこの身でこの事に当たるのは
誠に身分不相応なことだ
おほけなく = 身分不相応に
おほふかな = 墨染の袖を以って蔽ふことを感動的に表現
わがたつ杣 = 比叡山延暦寺の根本中堂の一名
墨染の袖 = 僧侶が着る衣
76番 藤原忠通の子
この歌の本歌とされる歌は
新古今集 巻第二十 釈教歌
比叡山中堂建立の時歌 伝教大師
阿耨多羅三藐三菩提の仏たち
わが立つ杣に冥加あらせ給へ
94番 参議雅経
2005/12/06 (Tue) 11:33
ふるさと寒く衣うつなり
吉野山の秋風が寂しげに吹いて夜も更けてきたが
折しも この古都の里人が打つ砧の音が
寒々と聞こへてくるよ
み吉野 = 「み」は美称の接頭語
さ夜 = 「さ」も美称の接頭語
ふるさと = ここでは古都・旧都の意 即ち吉野を指す
衣打つ = 砧(きぬた)打つ・布を槌で打って柔らかくする
藤原雅経
「寒く」は「ふるさと」「衣うつ」の両方に掛かる
衣打つ = 砧打つ を知らなかった頃の私は
衣を打っているのは秋風だとばかり思っていました
この歌は新古今集に「擣衣の心を」として出ています
本歌は坂上是則の
み吉野の山の白雪積もるらし
ふる里寒くなりまさるなり
93番 鎌倉右大臣
2005/12/04 (Sun) 14:26
あまの小舟の綱手かなしも
渚をこいでゆく漁夫の小舟の引き綱を扱ふ様子は
何とも言へず趣深いものだ
このやうな景色がいつまでも見られるやうに
世の中は変らないでいて欲しいものだ
常にもがもな = いつまでも永久不変であって欲しい
あま = 海人・漁夫 かなし = 愛し・いとほしい
源実朝は源頼朝の次男 母は北条政子
「常にもがもな」現代人にはまるで早口言葉のやうですね
この歌の本歌とされているのが以下の二首です
万葉集 01-0022
河の上のゆつ岩群に草むさず
常にもがもな常処女にて
古今集 巻第二十 東歌 (陸奥歌)
陸奥はいづくはあれど塩釜の
浦漕ぐ舟の綱手かなしも




























