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花の夕顔

源氏物語 夕顔

  さらば その宮仕人ななり したり顔にもの馴れて
  言へるかなと めざましかるべき際にやあらむと思せど
  さして聞こえかかれる心の憎からず過ぐしがたきぞ
  例のこの方には重からぬ御心なめるかし 御畳紙に
  いたうあらぬさまに書き変へたまひて


寄りてこそそれかとも見めたそかれに
  ほのぼの見つる花の夕顔


  ありつる御随身して遣はす


もっと近寄って誰だかはっきり見たらだうでせう
夕暮れ時に仄かにご覧になった夕顔を
 (親しく付き合ってみませんか)


源氏は「では贈歌の主はその宮仕へだな? したり顔に
もの馴れて詠みかけてきたものよ」と 相手として不足な
ほど身分の低い者であらうか などと考へたが自分を目指
して歌を贈ってきた心根がいとしく見過ごし難く思はれる
のは例の女のことにかけては慎重でないご性分なのだらう
畳紙にすっかり筆跡を変へてお書きになって
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夕顔の花

源氏物語 夕顔

  ・・・ありつる扇御覧ずればもて馴らしたる移り香
  いと染み深うなつかしくて をかしうすさみ書きたり


心あてにそれかとぞ見る白露の
  光そへたる夕顔の花


  そこはかとなく書き紛らはしたるも
  あてはかにゆゑづきたればいと思ひのほかに
  をかしうおぼえたまふ


当て推量ながら源氏の君かと存じます
白露の光にひとしほ美しい夕顔の花
光り輝く夕方のお顔は


この歌は凡河内躬恒の歌の調べ 形を写して詠まれている
古今集 巻第五 秋歌下 白菊の花を詠める

百人一首にも出ています 2005/09/19 29番 凡河内躬恒


心あてに折らばや折らむはつ霜の
  おきまどはせる白菊の花

忍び忍びに

源氏物語 空蝉

  つれなき人も さこそしづむれ いとあさはかにも
  あらぬ御気色を ありしながらのわが身ならばと
  取り返すものならねど忍びがたければ この御畳紙の
  片つ方に


空蝉の羽におく露の木隠れて
  忍び忍びに濡るる袖かな


蝉の羽根に置く露が木の間隠れに見へぬやうに
人目に隠れてひっそり涙に濡れる私の袖でござひます


さこそしづむれ = そんなに冷静に構へてはいるものの
いとあさはかにもあらぬ御気色を
    = 通り一遍とも思へない源氏のご様子に
ありしながらのわが身ならばと
    = 昔のままの身の上であったならと
取り返すものならねど = 昔に返すよしもないことだけれど

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うつせみの身

源氏物語 空蝉

  御硯急ぎ召して さしはへたる御文にはあらで畳紙に
  手習のやうに書きすさびたまふ


うつせみの身をかへてける木のもとに
  なほ人がらのなつかしきかな


  と書きたまへるを懐に引き入れて持たり かの人も
  いかに思ふらむと いとほしけれど かたがた思ほし
  かへして御ことづけもなし かの薄衣は小袿の
  いとなつかしき人香に染めるを身近くならして
  見ゐたまへり


蝉が殻(も)抜けて羽化していったあとに残された殻に
やはりあなたを なつかしみます


人がら = 「人殻」すなはち残された小袿(こうちき)を
  「人柄」に掛けている
かの人 = 軒端の萩
御ことづけもなし = 軒端の萩への手紙を小君に
  託すこともなさらない


空蝉が脱ぎ残していった薄衣の小袿が
影の主役を演じているやうな印象の残る章です

帚木

源氏物語 帚木

帚木の心を知らで園原の
  道にあやなく惑ひぬるかな


  聞こえむかたこそなけれ」とのたまへり
  女も さすがに まどろまざりければ


数ならぬふせ屋におふる名の憂さに
  あるにもあらず消ゆる帚木


  と聞こえたり


近づけば消えるといふ帚木のやうなつれないあなたの
心も知らないで園原への道に空しく迷ってしまひました


しがない貧しい家に生えていることが
情けなうございますので いたたまれずに
消へてしまふ帚木なのでございます

しがない身の上なのでお逢ひするのを避けた・・の意


帚木 = ははきぎ
聞こえむかたこそなけれ = 申し上げやうもございません
ふせ屋 = 貧しい家


巻第十一 恋歌一 坂上是則の歌に

園原や伏屋に生ふる帚木の
  ありとは見えて逢はぬ君かな

寝る夜なければ

源氏物語 帚木

見し夢をあふ夜ありやと嘆くまに
  目さへあはでぞ ころも経にける


  寝る夜なければ」など 目も及ばぬ御書きざまも
  霧りふたがりて心得ぬ宿世うち添へりける身を
  思ひ続けて臥したまへり


先夜の夢が現実のものになって再び逢ふ夜があらうかと
悲しんでいるうちに目までも合はないで(眠れもしないで)
何日も経ってしまひました


夢が合ふ = 夢が現実になる・・の意
  「合ふ」に「逢ふ」を掛けている
寝る夜なければ = 「拾遺集」(後述)
目も及ばぬ御書きざま = すばらしいお手紙の書きぶり


拾遺集 (源順) には

恋しきを何につけてか慰めむ
  夢だに見えず寝る夜なければ

身の憂さを嘆く

源氏物語 帚木

  鶏もしばしば鳴くに心あわたたしくて


つれなきを恨みもはてぬしののめに
  とりあへぬまでおどろかすらむ


  女 身のありさまを思ふに いとつきなくまばゆき
  心地して めでたき御もてなしも何ともおぼえず
  常はいとすくすくしく心づきなしと思ひあなづる
  伊予のかたの思ひやられて夢にや見ゆらむ
  とそら恐ろしくつつまし


身の憂さを嘆くにあかで明くる夜は
  とり重ねてぞ音もなかれける


  ことと明くなれば障子口まで送りたまふ
  うちも外も人騒がしければ引きたてて
  別れたまふほど心細く隔つる関と見えたり


あなたの冷たい態度に恨み言も十分言へないうちに
はや夜もしらみ だうして鶏までもせわしく
私を起こすのでせう


わが身の情けなさを嘆くにも嘆き足りないうちに明ける
この夜は鶏の声に重ねて私も声を立てて泣けてくるのです

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ささがに

源氏物語 帚木

  ・・げにそのにほひさへ はなやかにたち添へるも
  術なくて逃げ目をつかひて

ささがにのふるまひしるき夕ぐれに
  ひるま過ぐせといふがあやなき


  いかなることづけぞや」
  と言ひも果てず走り出ではべりぬるに追ひて


逢ふことの夜をし隔てぬ仲ならば
  ひる間もなにかまばゆからまし


  さすがに口疾くなどははべりき」と しづしづと申せば
  君達あさましと思ひて嘘言とて笑ひたまふ


蜘蛛の動きで分かっている筈のこの夕暮に
ニンニクの匂いがするから昼間は待て と言ふのは
理の通らない話ですねぇ 聞こえませんよ


夜毎に逢っている仲でしたらニンニクの匂いがする昼間
でも だうして恥ずかしいことでありませうか


ささがに = 蜘蛛・蜘蛛の枕詞
ひるま過ぐせと = 「昼」と「蒜(ひる)」を掛けている
  蒜はニンニクのこと

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ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
    この写真は但馬皇女の歌
    人言を繁み言痛み己が世に
      未だ渡らぬ朝川渡る

    をイメージしたものです

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