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雨も降らぬか

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3837 久堅之雨毛落奴可蓮荷尓 渟在水乃玉似有将見


ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に
  渟れる水の玉に似たる見む


  右の歌一首は伝へて云はく 「右の兵衛なるものあり
  (姓名いまだ詳らかならず) 多く歌を作る芸を能くす
  時に府家に酒食を備へ設け府の官人等を饗宴す
  ここに饌食は盛るに皆荷葉を用ちてす 諸人酒酣に
  歌舞駱駅せり 乃ち兵衛なるものを誘ひて云はく
  『其の荷葉に関けて歌を作れ』といへれば登時声に
  応へてこの歌を作りき」といへり


あの空から雨でも降ってこないものかなぁ
蓮の葉っぱに溜った水が玉のやうにきらきら光るのが
見たいものだ


ひさかたの = 雨の枕詞
雨も降らぬか = 雨が降って欲しい(願望)
酒酣に = 酒たけなはに
駱駅 = らくえき・引き続くさま
登時 = すなはち

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夕顔の花

源氏物語 夕顔

  ・・・ありつる扇御覧ずればもて馴らしたる移り香
  いと染み深うなつかしくて をかしうすさみ書きたり


心あてにそれかとぞ見る白露の
  光そへたる夕顔の花


  そこはかとなく書き紛らはしたるも
  あてはかにゆゑづきたればいと思ひのほかに
  をかしうおぼえたまふ


当て推量ながら源氏の君かと存じます
白露の光にひとしほ美しい夕顔の花
光り輝く夕方のお顔は


この歌は凡河内躬恒の歌の調べ 形を写して詠まれている
古今集 巻第五 秋歌下 白菊の花を詠める

百人一首にも出ています 2005/09/19 29番 凡河内躬恒


心あてに折らばや折らむはつ霜の
  おきまどはせる白菊の花

沫緒に縒りて

伊勢物語 (三十五段)

昔 本心で絶えることを望んだのではなく逢へないまま
交情が絶えた女のもとに

  むかし心にもあらで絶えたる人のもとに


玉の緒をあは緒によりて結べれば
  絶えての後も逢はむとぞ思ふ


私達の魂をあは緒結びに縒ったやうに結びつけましたので
二人の間がとだへた後も切れたままにはならず
また逢ふことが出来ると思ひます


この元歌は 万葉集 巻第四にあります
紀郎女の大伴宿禰家持に贈れる歌二首
女郎は名を小鹿と曰へり

4-0763 玉緒乎沫緒二搓而結有者 在手後二毛不相在目八方


玉の緒を沫緒によりて結べらば
  ありて後にも逢はざらめやも

つれなかりける人

伊勢物語 (三十四段)

昔 男がすげない女のもとに歌を詠んだ

  むかし 男 つれなかりける人のもとに


いへばえにいはねば胸にさはがれて
  心ひとつに歎くころかな


  おもなくていへるなるべし


口に出して言ほうとすれば言へず 言はなければ胸の中に
思ひ乱れて私の心の中だけで嘆くばかりのこの頃です


臆面もなく苦しい心の中を詠んだのだらう

つれなかりける人 = 「つれなし」は心を動かさぬさま
  無常冷淡であった女
いへばえに = 言へばえに
おもなくて = 臆面もなく・面目なくて ここでは前者


「古今六帖」にある関連歌

言へばえに言はねば苦し世の中を
  嘆きてのみもすぐすべきかな

こもり江

伊勢物語 (三十三段)

昔 男が津の国 菟原の郡(芦屋市の辺り)に住む女の所へ
通っていたが 女は 男が今度帰って行ったら もう再び
来るまいと思っている様子だったので男が

  むかし男 津の国 菟原の郡に通ひける女 このたび
  行きては または来じと思へるけしきなれば 男


あしべより満ちくる潮のいやましに
  君に心を思ひますかな


  返し

こもり江に思ふ心をいかでかは
舟さす棹のさして知るべき


  ゐなか人の事にては よしやあしや


蘆が生えている岸の辺りをだんだん満ちてくる潮のやうに
いよいよますますあなたを慕ふ心が深くなります


人目に隠れた入り江のやうに外にあらはれず心に深く
思っている私の心を あなたはだうしてそれと知ることが
出来ませう


田舎物の歌としては よい歌だらうか
まずまずの出来だらう

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倭文の苧環

伊勢物語 (三十二段)

  むかし ものいひける女に年ごろありて


いにしへのしづのをだまき繰りかへし
  昔を今になすよしもがな


  といへりけれど何とも思はずやありけむ


昔 かつて関係を結んだ女に何年か経って 男が

もう一度 あなたと愛し合った昔の仲を
今に取り戻す手立てがあったらなぁ


と詠んでやったが女は何とも思はなかったのか
何も言って来なかった


倭文 = しづ・古代の織物 枕詞「いにしへの」を冠する
苧環 = をだまき・糸を巻いたもの 糸を繰るところから
  「繰りかへし」を引き出す


古今集 巻第十七 雑歌上 題知らず 読人知らず
いにしへの倭文のをだまき賤しきも
  よきも盛りはありしものなり


静御前の詠ひ替え
しずやしずしずのおだまきくりかえし
  昔を今になすよしもがな

よしや草葉よ

伊勢物語 (三十一段)

むかし宮中で男がある身分の高い女房の局の前を通った時
男をどんな恨みあるものに思ったのだらうか
「まあよい 草葉よ今は栄えていても後にはどんなに衰へ
るか お前の本当の姿を見てやりませう」 といふ
そこで男は詠んだ

  むかし宮の内にてある御達の局の前を渡りけるに
  何のあたにか思けむ
  「よしや草葉よ ならむさが見む」といふ 男


つみもなき人をうけへば忘れ草
  おのがうへにぞ生ふといふなる


  といふを ねたむ女もありけり


罪も無い人を呪ふと忘れ草が自分の上に生えて
人に忘れられるとか申しますよ


と詠んだのを聞いて憎らしく思ふ女もいた


御達 = 「御」は婦人の敬称 「達」は複数
局 = 障屏具などでしきってる部屋
あた = 自分に害を加へる者
  恋の恨みなどで「あたに思ふ」
うけへば = 「うけふ」は呪ふ
忘れ草 = 男に忘れられるの意

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忍び忍びに

源氏物語 空蝉

  つれなき人も さこそしづむれ いとあさはかにも
  あらぬ御気色を ありしながらのわが身ならばと
  取り返すものならねど忍びがたければ この御畳紙の
  片つ方に


空蝉の羽におく露の木隠れて
  忍び忍びに濡るる袖かな


蝉の羽根に置く露が木の間隠れに見へぬやうに
人目に隠れてひっそり涙に濡れる私の袖でござひます


さこそしづむれ = そんなに冷静に構へてはいるものの
いとあさはかにもあらぬ御気色を
    = 通り一遍とも思へない源氏のご様子に
ありしながらのわが身ならばと
    = 昔のままの身の上であったならと
取り返すものならねど = 昔に返すよしもないことだけれど

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勝間田の池

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3835 勝間田之池者我知蓮無 然言君之鬚無如之

  新田部親王に献れる歌一首 いまだ詳らかならず


勝間田の池はわれ知る蓮なし
  しか言ふ君が鬚なき如し


勝間田の池は私は知っています 蓮などありません
さう言ふあなたに 鬚がないのと同じです


  右は或る人ありて聞けり 曰はく「新田部親王 堵の
  裏に出て遊び勝間田の池を見まして 御心の中に
  感でませり 彼の池より還りて怜愛に忍びず 時に
  婦人に語り曰はく『今日遊行でて勝間田池を見るに
  水影濤濤に蓮花灼灼なり おもしろきこと腸を断ち
  え言ふべからず』といふ すなわは婦人この戯の歌
  を作りてもはら吟詠ひき」といへり

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葵花咲く

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3834 成棗寸三二粟嗣延田葛乃 後毛将相跡葵花咲

  作主のいまだ詳らかならぬ歌一首


梨棗 黍に粟つぎ延ふ葛の
  後も逢はむと葵花咲く


なしなづめ きみにあはつぎ はふくずの
  後も逢はむと あふひ花咲く

梨 棗 黍に粟がついでみのり蔓をのばす葛のやうに
後にまた逢ほうと葵の花が咲く


梨棗 = 「遊仙窟」によるといふ説がある
黍に粟つぎ = 「君に逢はず」の意に掛ける
延ふ葛の = 「後も逢はむ」の枕詞
葵 = あふひ・「逢ふ日」に掛ける


植物六種がこの歌に詠み込まれています
「遊仙窟」が万葉人に与へた影響は大きいとされています
私も機会があれば一度読んでみたい本です

虎に乗り

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3832 枳蕀原苅除曽氣倉将立 屎遠麻礼櫛造刀自
16-3833 虎尓乗古屋乎越而青淵尓 鮫龍取将來劒刀毛我

  忌部首が数種の物を詠める歌一首 名は亡失せり


からたちの棘原刈り除け倉建てむ
  屎遠くまれ櫛造る刀自


  境部王の数種の物を詠みたまへる歌一首
    穂積親王の子なり


虎に乗り古屋を越えて青淵に
  蛟龍捕り来む剣大刀もが


枳のいばらを刈り取って倉を建てやう
屎は遠くにしてくれ 櫛造りのおばさんよ


虎に跨って古屋を飛び越えて行って
蛟龍を生捕りにしてこれるやうな剣大刀が欲しいなぁ

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池神の力士舞

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

  長忌寸意吉麻呂が歌八首

16-3830 玉掃苅來鎌麻呂室乃樹 與棗本可吉将掃為
16-3831 池神力土N可母白鷺乃 桙啄持而飛渡良武

  玉掃 鎌 天木香 棗を詠める歌

玉掃刈り来鎌麻呂室の木と
  棗が本と掻き掃かむため


  白鷺の木を啄ひて飛ぶを詠める歌

池神の力士舞かも白鷺の
  桙啄ひ持ちて飛び渡るらむ


箒にする玉掃を刈り取って来い 鎌麻呂よ
室の木と棗の木の下を掃除したいから


池の神が演ずる力士舞とでも言おうか
白鷺が桙をくわへ持って飛び渡っているのは


玉掃 = たまばはき・玉は美称 掃は箒 ここではその材料
天木香 = むろのき  棗 = なつめ


業平の「かきつばた」のやうに五文字を句の頭に据えた
歌が折句  十文字を句の頭と末に据えた折句が
「沓冠(くつかむり・くつかぶり)」です

ところが ここでは文字ではなく幾つかの語句を句の中に
織り込んで遊んでいます

落語の世界でもお客からお題(言葉)を頂き その語句を
織り込んで即席で落語を語る遊びがありますね

川隈の屎鮒

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

  長忌寸意吉麻呂が歌八首

16-3828 香塗流塔尓莫依川隈乃 屎鮒喫有痛女奴
16-3829 醤酢尓蒜都伎合而鯛願 吾尓勿所見水葱乃煮物

  香 塔 厠 屎 鮒 奴を詠める歌

香塗れる塔にな寄りそ川隈の
  屎鮒食めるいたき女奴


  酢 醤 蒜 鯛 水葱を詠める歌

醤酢に蒜搗き合てて鯛願ふ
  我にな見せそ水葱の羹


香を塗り込めたほど香の高い塔には近寄るな
厠のある川の隅に集まる屎鮒を喰ってひどく臭ふ女奴め


醤に酢を加へ蒜をつき混ぜたたれを作って鯛が欲しいと
願っているこの私に水葱の羹など見せないでくれ


香 = 仏前で焚くお香
厠 = 川隈・便所・川の隅で用を足すことが多かった
屎鮒 = くそふな・川隈の鮒を蔑む語としている
女奴 = めやっこ・寺などで使役された身分の低い女
醤 = ひしほ
蒜 = ひる・葱に似た野菜
水葱の羹 = なぎのあつもの

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うつせみの身

源氏物語 空蝉

  御硯急ぎ召して さしはへたる御文にはあらで畳紙に
  手習のやうに書きすさびたまふ


うつせみの身をかへてける木のもとに
  なほ人がらのなつかしきかな


  と書きたまへるを懐に引き入れて持たり かの人も
  いかに思ふらむと いとほしけれど かたがた思ほし
  かへして御ことづけもなし かの薄衣は小袿の
  いとなつかしき人香に染めるを身近くならして
  見ゐたまへり


蝉が殻(も)抜けて羽化していったあとに残された殻に
やはりあなたを なつかしみます


人がら = 「人殻」すなはち残された小袿(こうちき)を
  「人柄」に掛けている
かの人 = 軒端の萩
御ことづけもなし = 軒端の萩への手紙を小君に
  託すこともなさらない


空蝉が脱ぎ残していった薄衣の小袿が
影の主役を演じているやうな印象の残る章です

はつかなりける女

伊勢物語 (三十段)

昔 男が思ふやうに逢へなかった女のところへ
詠んでやった歌

  むかし男 はつかなりける女のもとに


逢ふことは玉の緒ばかりおもほえて
  つらき心の長く見ゆらむ


あなたに逢ふことは玉の緒ほどのほんの僅かの間のやうに
思はれてあなたのつれない心が長く感じられます


はつか = 僅か

男はもっとしばしば逢ひたいと思ふが
何かの障りがあってなかなか思ふやうに
逢へなかったのでせうね

花の賀

伊勢物語 (二十九段)

昔 東宮の女御のもとで催された花の賀に召し加へられた
ときに男が詠んだ歌

  むかし春宮の女御の御方の花の賀に
  召しあづけられたりけるに


花に飽かぬ歎きはいつもせしかども
  今日の今宵に似る時はなし


花に心を残して別れる悲しさは いつの年にも覚えたもの
ですが 今日の今宵は今までにも似ず とりわけ悲しい
思ひがします


春宮の女御の御方 = 春宮(皇太子)を生んだ母の女御
  即ち「二条の后 高子」である
  二条の后高子は清和天皇の女御で
  陽成天皇となった皇太子 貞明親王の母である
召しあづけられ = 賀の催しに召されて祝宴のための
  仕事の一部を委任されること


この歌は一見 賀歌で見へますが 過去の恋の思ひを后に
対して詠んでいることは当の后は勿論のこと
他の人たちにも分かったと思ひます

あふごかたみ

伊勢物語 (二十八段)

昔 色好みであった女が他の男にひかれて男の家を出て
行ったのでその男が詠んだ歌

  むかし色好みなりける女 いでて去にければ


などてかくあふごかたみになりにけむ
  水もらさじと結びしものを


だうしてこのやうに逢ふことが難しくなってしまったのか
水も漏らさない仲でいやうと誓い合ったのに


色好み = 風流好み(男好きの意とは異なる)
あふごかたみ = 逢ふ期難み・逢ふ時が得難い
あふご = 朸(あふご 天秤棒)に掛けている
かたみ = 筐(かたみ 竹で編んだ籠)に掛けている
などてかく = だうしてこのやうに
結びし = 契る・水を汲むの意に掛けている


筐(籠)は 朸(天秤棒)でかつぐ
竹で編んだ籠に水を汲んでも漏れるばかりですね

たらひの影

伊勢物語 (二十七段)

昔 男が女のところに一晩行って二度とは行かなくなって
しまったので女は手を洗ふ所で 丁度 盥(たらひ)の上に
かける貫簀(ぬきす)が除けてあって自分の顔が盥の水に
映って見えたので 自ら次の歌を詠んだ

  むかし男 女のもとに一夜いきて またもいかずなりに
  ければ女の手洗ふ所に貫簀をうちやりて
  たらひのかげに見えけるを みづから


わればかり もの思ふ人は またもあらじと
  思へば水の下にもありけり


  とよむを来ざりける男 たち聞きて


みなくちにわれや見ゆらむ かはづさへ
水の下にてもろ声に鳴く


私ほど悲しい思ひの人は ほかにはいないと思って
おりましたら この水の下にもいましたわ


水の下で泣く人とは水口に私の姿が現れたのでせう
田の水口の蛙までもが水底で声をあはせて鳴いているで
はありませんか 私もあなたと声をあはせて泣いています

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もろこし船

伊勢物語 (二十六段)

昔 五条辺り住む女を得ることが出来なくなってしまった
と悲しんでいる男が 或る人への返事に詠んだ歌

  むかし男 五条わたりなりける女をえ得ずなりに
  けることと わびたりける 人の返ごとに


思ほえず袖にみなとのさはぐかな
  もろこし船の寄りしばかりに


思ひがけず あの人との縁も切れて 私の袖には港の水が
荒れて波立つやうに悲しみの涙があふれます
それはまるで珍しい唐船がいきなり港に寄って来たほど
にも激しい涙の波が立つのです


わびたり = 「わぶ」は嘆くの意

「五条わたりなりける女」は二条の后 高子
男は業平でせうが だうもこの歌は はっきりすっきり
しません

新古今集には読人不知として出ています

帚木

源氏物語 帚木

帚木の心を知らで園原の
  道にあやなく惑ひぬるかな


  聞こえむかたこそなけれ」とのたまへり
  女も さすがに まどろまざりければ


数ならぬふせ屋におふる名の憂さに
  あるにもあらず消ゆる帚木


  と聞こえたり


近づけば消えるといふ帚木のやうなつれないあなたの
心も知らないで園原への道に空しく迷ってしまひました


しがない貧しい家に生えていることが
情けなうございますので いたたまれずに
消へてしまふ帚木なのでございます

しがない身の上なのでお逢ひするのを避けた・・の意


帚木 = ははきぎ
聞こえむかたこそなけれ = 申し上げやうもございません
ふせ屋 = 貧しい家


巻第十一 恋歌一 坂上是則の歌に

園原や伏屋に生ふる帚木の
  ありとは見えて逢はぬ君かな

双六のさえ

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3827 一二之目耳不有五六三四佐倍有來雙六乃佐叡

  長忌寸意吉麻呂が歌八首  双六の頭を詠める歌


一二の目のみにはあらず五六三
四さへありけり双六のさえ


一の目 二の目だけではない 五の目 六の目 三の目
それに四の目まであったよ この双六の賽に


一二 = いちに  五六三 = ごろくさむ  四 = し

訓読みが変れば句の切れ目も変ります

1-0048 東野炎立所見而反見為者月西渡


東(ひむがし)の野に炎(かぎろひ)の立つ見えて
  かへり見すれば月かたぶきぬ


賀茂真淵がこのやうに訓読みする以前は
次のやうに訓読みされていたとか


東野(あづまの)に煙(けぶり)の立てる所見て
  かへり見すれば月かたぶきぬ

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芋の葉にあらし

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

  長忌寸意吉麻呂が歌

16-3826 蓮葉者如是許曽有物意吉麻呂之
      家在物者宇毛乃葉尓有之

  荷葉を詠める歌


蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が
  家なるものは芋の葉にあらし


蓮の葉とは このやうにこそあるもの
私の家にあるものは まるで芋の葉のやうです


荷葉 = はちすば
芋 = 「妹」に掛けている


蓮の葉を美女に譬へ自分の妻を芋の葉のやうだと言って
卑下している 戯れ歌ではあるが 果たして意吉麻呂が妻は
どのやうな女性だったのでせうねぇ

食薦敷き

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3825 食薦敷蔓菁煮将來梁尓 行騰懸而息此公

  長忌寸意吉麻呂が歌

行騰 蔓菁 食薦 屋梁を詠める歌


食薦敷き青菜煮持ち来梁に
  むかばき懸けて息むこの君


食薦(すこも)を敷いて青菜を煮て来い 梁(うつはり)に
行騰(むかばき)をかけて休んでいるこの君に


行騰 = むかばき・腰に下げて腿から下を被うもの
食薦 = すこも・食卓に敷く薦製の敷物
屋梁 = やのうつはり・家の棟を受ける梁


訓読みで「てにをは」が異なると歌意も違ってきます

食薦敷き青菜煮て来む梁に
  むかばき懸けて休めこの君


食薦を敷いて青菜を煮て来ませう 行騰を解いて梁に
引っ掛けて休んでいて下さいね 旦那様

狐に浴むさむ

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

16-3824 刺名倍尓湯和可世子等檪津乃
       桧橋従來許武狐尓安牟佐武


  長忌寸意吉麻呂が歌八首

さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の
桧橋より来む狐に浴むさむ


  右の一首は伝へて云はく ある時に衆集ひて宴飲しき
  時に夜漏三更にして狐の声聞こゆ すなはち衆諸
  意吉麻呂を誘ひて曰く この饌具 雑器 狐の声 河 橋
  等の物に関けてただに歌を作れ といひき すなはち
  声に応へてこの歌を作りき といふ


さす鍋に湯を沸かせ 者どもよ 櫟津の桧橋を渡って
「こむこむ」とやって来る狐めにぶっかけてやるのだ


櫟津 = いちひつ(地名) 雑器の一つである櫃(ひつ)の
   語が隠れている
桧橋 = 「河 橋」に当たる
来む = こむ 「狐の声」に当たる
饌具 = 炊事や飲食用の器具 さし鍋もその一つ
雑器 = さまざまな家具

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ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
    この写真は但馬皇女の歌
    人言を繁み言痛み己が世に
      未だ渡らぬ朝川渡る

    をイメージしたものです

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