スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

伊勢物語(三段)

伊勢物語(三段)

  むかし男ありけり 懸想じける女のもとに ひじき藻
  といふものをやるとて

思ひあらば葎の宿に寝もしなむ
  ひじきものには袖をしつつも


  二条の后のまだ帝にも仕うまつり給はで
  ただ人にておはしましける時のことなり

昔 男がいた。想ひをかけた女のもとへひじき藻を贈った
それには次のやうな歌を添へて


私のことを思って下さるのでしたら葎(むぐら)の生ひ茂るや
うなあばら屋で一緒に寝も致しませう。敷物には着物の袖を
使ってでも


ところでこの女といふのは二条の后のことで まだ清和天皇
の女御としてお仕へにならずに普通の人でおられた時のこと
です
ひじき藻 = 海草のヒジキ・海産物は貴重品
ひじきもの = 引敷物(夜具)
  贈り物のひじき藻を歌の引敷物に詠み込んでいます
  これは物名(もののな)といふ(歌の)技法です
二条の后 = 清和天皇の后・陽成天皇の母
  二条の后は高子の通称・高子は藤原長良の女(むすめ)
ただ人 = 普通の人
  皇室とはまだ無関係な身分であった時の人・・の意
スポンサーサイト

伊勢物語(二段)

伊勢物語(二段)
  むかし男ありけり。平城の京は離れ この京は人の家ま
  ださだまらざりける時に 西の京に女ありけり。その女
  世人にはまされりけり。その人かたちよりは心なむまさ
  りたりける。ひとりのみもあらざりけらし。それをかの
  まめ男 うち物語らひて帰り来ていかが思ひけむ。時は三
  月のついたち 雨そほふるに遣りける

起きもせず寝もせで夜をあかしては
  春の物とてながめ暮しつ


昔 男がいた。奈良の都は既に都ではなくなり 遷都したこの
京の都は まだ人家が落ち着いていなかった頃 西の京に と
ある女が住んでいた。その女は世間の普通の女より優れてい
た。容貌よりは心の方が優れていたのでした。
夜尋ねてくる男がいないといふ訳でもなかったやうである。
例の誠実な男が その女と一夜を明かして(情を通じて)帰っ
てきてどんなに恋しく思ったことか 時は三月一日 雨がそぼ
降る中 次のやうな歌を詠んでその女に贈った。


昨夜あなたと逢ってからといふもの 一晩中 寝るでなし起き
るでなしの夜を明かし 今は春のものとして降るこの長雨を
眺め見ながら物思ひに耽っています


古今集 在原業平のこの歌の詞書には次のやうにあります。
後朝(きぬぎぬ)の歌といったところでせうか


  三月のついたちより忍びにものを言ひて後
  雨のそぼ降りけるによみてつかはしける

この京 = 平安遷都後の京の都  離れ = 遠ざかり
西の京 = 平安京の中央を南北に走る通りは朱雀大路
 (現在の千本通り) 朱雀大路より西を西の京と呼ぶ
かたち = 容貌・外見  心なむ = 「なむ」は強調の意の
  係助詞 連体形で結ぶ (係り結び) まさりたり
ける
かのまめ男 = むかし男ありけり の当人(この物語の主人公)
ながめ = 眺め = 長雨に掛けている

伊勢物語(初段)

伊勢物語(初段)
  むかし 男 初冠して平城の京 春日の里に しるよしして
  狩に往にけり。その里にいとなまめいたる女はらから住
  みけり。この男かいまみてけり。おもほえず古里にいと
  はしたなくてありければ心地まどひにけり。男の着たり
  ける狩衣の裾を切りて歌を書きてやる。その男 しのぶ
  ずりの狩衣をなむ着たりける

春日野の若紫のすり衣
  しのぶのみだれかぎり知られず


  となむ おひつきていひやりける。
  ついでおもしろきことともや思ひけむ

みちのくの忍ぶもぢずり誰ゆゑに
  乱れそめにし我ならなくに


  といふ歌の心ばへなり
  昔人はかくいちはやき みやびをなむしける

昔 男がいた。現代でいふ成人式をすませ奈良の春日の里に
領地を貰ひ 或る日 狩に出かけた。
その里には若々しくて美しい姉妹が住んでいた。そして男は
この姉妹を物陰から窺ひ見てしまった。
古びた田舎に似つかはしくない姉妹の出現に 男は見とれて
胸はどきどき。自分の着ていた狩衣の裾を切り取り それに
歌を書いて この美しい姉妹に贈った。
このとき男の着ていた狩衣は しのぶ摺り といってしのぶ草
の模様を摺りつけた狩衣であったのだ


春日野の若々しい紫草のやうなあなたを恋ひ忍んで
私の心はまるでこのしのぶ摺りの模様のやうに限り
も知られず思ひ乱れています


とすぐに詠んで贈ったのであった
丁度しのぶ摺りの狩衣を着ていたといふことがその場にかな
った趣深いことと思ったからであらうか


私の心がこんなに乱れているのは他の誰でもない
みんな あなたのせいですよ


といふ歌の気持を踏へて前の歌(春日野の)を詠んだのだ
このやうに昔の人は 素早く積極的に しかも優雅で知性に満
ちた恋をしたものである

初冠(うひかうぶり) = 男子の成人式で初めて成人の服を着
冠をつける・元服
平城(なら) = 奈良  春日の里 = 春日山の麓
しるよしして = 領地を所有している縁で
なまめいたる = 若々しく美しい  女はらから = 姉妹
かいまみて = 覗き見して
おもほえず = 意外にも 思ひがけなくも
いとはしたなくてありければ = 古びた田舎とはあまりにも
不釣合だったので
心地まどひにけり = 姉妹の美しさに胸がどきどきする様子
狩衣 = 狩や旅行の際に着用した着物
おひつきて = 追ひつきて・すぐに
之を「おひづきて」と読むと = 老ひづきて 即ち 恋の経験
豊かな大人のやうに (私の解釈は前者 = すぐに)

前の歌「春日野の」は 美しい姉妹が「みちのくの」を当然
知っているであらうといふ前提で贈っている。

side menu

当ブログの参考資料

歌の復籍 上巻・下巻
著者 梅原猛
集英社
歌の復籍


水底の歌 上巻・下巻
著者 梅原猛
新潮社
水底の歌
文庫本が出ています↓
水底の歌(上)
水底の歌(下)


万葉集(一) 全訳注原文付
講談社文庫 著者: 中西進
万葉集(一)


万葉集(二) 全訳注原文付
講談社文庫 著者: 中西進
万葉集(二)


万葉集(三) 全訳注原文付
講談社文庫 著者: 中西進
万葉集(三)


万葉集(四) 全訳注原文付
講談社文庫 著者: 中西進
万葉集(四)


万葉集(別巻)全訳注原文付
万葉集事典 講談社文庫
著者: 中西進
万葉集(別巻)


文法全解 伊勢物語
著者 雨海博洋
旺文社
伊勢物語


古今和歌集要解
著者 稲村徳
有精堂
古今和歌集要解


新古今和歌集要解
著者 稲村徳
有精堂
新古今和歌集要解


もっとも分り易き 萬葉集の解釋
著者 柴田隆
日本出版社
定價金70錢?
もっとも分り易き 萬葉集の解釋


萬葉集選抄
著者 次田潤
明治書院
定價金壱圓拾錢
萬葉集選抄


大和物語・宇津保物語 他
著者 藤井貞和 大岡信
新潮社
大和物語


源氏物語(一)
石田穣二 清水好子 校注
新潮日本古典集成
新潮社版
(下の写真は背表紙)
古今和歌集要解

最近のコメント

関連リンク

side menu

カレンダー

12 | 2009/01 | 02
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

当ブログの参考資料

京都ルルブ
2001年3月版
JTB
京都ルルブ


くわしい解説 小倉百人一首
著者 小町谷照彦
文英堂
小町谷照彦の小倉百人一首


田辺聖子の小倉百人一首
著者 田辺聖子
角川文庫
田辺聖子の小倉百人一首
ここで購入できます↓
田辺聖子の小倉百人一首


絢爛たる暗号
著者 織田正吉
集英社
絢爛たる暗号
文庫本が出ています↓
絢爛たる暗号


小倉百人一首全釈
著者 井上雄一郎
武蔵野書院
井上雄一郎の小倉百人一首


百人一首故事物語
著者 池田弥三郎
河出書房新社
百人一首故事物語
文庫本が出ています↓
百人一首故事物語


上田秋成集
著者 稲村徳
有精堂
上田秋成集


『万葉集』の世界
著者 阿蘇瑞枝・梅原猛・中西進
筑摩書房
『万葉集』の世界


万葉を考える
著者 梅原猛ほか
新潮社
万葉を考える


大和物語・伊勢物語 他
日本古典文学全集
著者 片桐洋一・福井貞助
・高橋正治・清水好子
小学館
(下の写真は背表紙)
日本古典文学全集

プロフィール

ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
    この写真は但馬皇女の歌
    人言を繁み言痛み己が世に
      未だ渡らぬ朝川渡る

    をイメージしたものです

ブログ内検索

Powered By FC2 blog

FC2Ad


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。