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伊勢物語(十段)

伊勢物語(十段)
  むかし 男 武蔵の国までまどひありきけり。さてその国に
  ある女をよばひけり。父はこと人にあはせむといひけるを
  母なむあてなる人に心つけたりける。父はなほびとにて
  母なむ藤原なりける。さてなむあてなる人にと思ひける。
  このむこがねによみておこせたりける。住む所なむ入間の
  郡みよし野の里なりける。

みよし野の田の面の雁もひたぶるに
  君がかたにぞよると鳴くなる


  むこがね返し

わが方によると鳴くなるみよし野の
  たのむの雁をいつか忘れむ


  となむ。人の国にても なほかかることなむやまざりける。

昔 男が武蔵の国まであてもなく旅をして行った。そしてその
国に住むある女に求婚した。女の父親は別の男と結婚させ
やうと言ったが母親は高貴な身分の人にと心がけていた
父親は氏も素性もない普通の身分であり 母親の方は藤原
貴族の出であった。だからこそ高貴な都の人を婿にと思ひ
決めていた母親はこの婿の候補者に娘に代って歌を詠んで
贈った
この一家の住んでいる所は入間の郡の三芳野の里であった


この三芳野の田の面におりて鳴く雁も
ただひたすらに あなたの方に寄りたいと言って鳴いて
ゐるやうです
私の娘もあなたを頼りたひと思っているやうです


婿の候補者の返歌

私を頼りたひと鳴いている たのむの雁をいつ忘れることが
ありませうや
あなたの娘御を忘れることなんてありません


よその国に来ても尚 男のこのやうな風流好みは止まなかった

たのむの雁 = 田の面に降り立っている雁 頼むの掛詞
よると鳴くなる = あなたの所へ寄りたいと夜になると
  泣いています・寄ると夜の掛詞

この歌は 2005/08/13 たのむの雁 にも掲載してあります
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伊勢物語(九段)その三

伊勢物語(九段)その三

  なほ行き行きて 武蔵の国と下総の国との中に いとおほき
  なる河あり。それをすみだ河といふ。その河のほとりに
  むれゐて思ひやれば 限りなく遠くも来にけるかな とわび
  あへるに 渡守 「はや舟に乗れ。日も暮れぬ」といふに
  乗りて渡らむとするに みな人ものわびしくて 京に思ふ人
  なきにしもあらず。さる折しも 白き鳥の嘴と脚とあかき
  鴫の大きさなる 水のうへに遊びつつ魚をくふ。京には見え
  ぬ鳥なれば みな人見知らず。渡守に問ひければ
  「これなむ都鳥」といふを聞きて

名にし負はばいざこと問はむ都鳥
  わが思ふ人はありやなしやと


  とよめりければ 舟こぞりて泣きにけり。

更に旅を続けて行くと 武蔵と下総との境にたいそう大きな
河がある。それを隅田河といふ。その河のほとりに集り座って
京に思ひをはせると 限りなく遠くまで来てしまったなぁ と
嘆きあっていると渡し守が「早く舟に乗れ 日が暮れてしまふ」
といふので乗って渡らうとするが 皆 何ともいへず淋しく
京に恋しい人がいないわけではない ちょうど そんな折
白い鳥で嘴(くちばし)と脚の赤い鴫(しぎ)ほどの大きさの鳥が
水の上を泳ぎながら魚を獲って食べている。京では見かけない
鳥なので誰も知らない。渡し守に尋ねると「これが都鳥じゃ」
といふのを聞いて


都鳥よ お前は名前の通りに都のことを何でも知っているなら
お前に尋ねやう
私の思ふ人は今 京で無事で元気に暮らしているだらうか


と詠んだので舟中の人は一同感極まって泣いた

武蔵の国 = 埼玉・東京・神奈川にまたがる地域
名にし負はば = 名前のとほりであるなら

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      未だ渡らぬ朝川渡る

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