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伊勢物語(六十四段)

伊勢物語(六十四段)
  むかし 男 みそかに語らふわざもせざりければ
  いづくなりけむ あやしさによめる

吹風にわが身をなさば玉すだれ
  ひま求めつつ入るべきものを


  返し

とりとめぬ風にはありとも玉すだれ
  誰が許さばかひま求むべき


昔 男 相手の女がひそかに逢って語り合ふこともしな
かったので どこに女がいるのか分からず不審に思ひ詠んだ


吹く風に私の身を変へたなら あなたの姿を隠している
玉簾の隙間を探して お側へ入っていけるのに
それが出来ないのが残念です


掴まへることの出来ない風であっても いったい誰の
許しで簾の隙間を求めて入ってこられるといふのですか
そんなことはいけません


即ち 女はこの男に逢ほうとしなかった
玉簾 「玉」は美称  宮中の簾
だとすれば女は二条后 男は業平といふことになる
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伊勢物語(六十三段)

伊勢物語(六十三段)
  むかし世こころつける女 いかで心情あらむ男に逢ひ得
  てしがなと思へど 言ひ出でむもたよりなさに まこと
  ならぬ夢語りをす 子三人を呼びて語りけり
  二人の子は情なくいらへて止みぬ 三郎なりける子なむ
  「よき御男ぞ出でこむ」とあはするに この女 気色
  いとよし 「こと人はいと情なし いかでこの在五中将
  に逢はせてしがな」と思ふ心あり
  狩しありきけるに行きあひて道にて馬の口をとりて
  「かうかうなむ思ふ」といひければ あはれがりて来て
  寝にけり さてのち男 見えざりければ 女 男の家に
  行きて垣間みけるを 男 ほのかに見て

百歳に一歳たらぬつくも髪
  我を恋ふらし面影に見ゆ


  とて 出でたつ気色を見て うばらからたちにかかりて
  家に来てうちふせり 男 かの女のせしやうに 忍びて
  立てりて見れば 女 嘆きて寝とて

さむしろに衣かたしきこよひもや
  恋しき人に逢はでのみ寝む


  とよみけるを 男 あはれと思ひてその夜は寝にけり
  世の中の例として思ふをば思ひ 思はぬをば思はぬ
  ものを この人は思ふをも思はぬをも けぢめ見せぬ
  心なむありける

むかし好色ん女が なんとかして情愛深い男に逢ひたひ
ものだと思っても きっかけもないままに 作りごとの
夢物語をした 女は子供三人をそばに呼び寄せて この
話をした 三人のうち上の二人の子は 思ひ遣りのない返事
をして 取り合はなかった 三番目に当る息子は「立派な
方が現はれるでせう」と夢合せをしたので この女は機嫌が
とてもよくなった 三男は「他の男は全く情愛がない
あの在原業平に母を逢はせたひものだ」と思った
業平があちこち鷹狩しているのに出会って路上で乗馬の口を
とって「かうかう思っているのです」と言ふと業平は
不憫に思ひ やって来て 女と寝たのであった
それきり業平が来なかったので 女は男の家に行って
覗き見したのを 男はちらっと見て


百歳に一歳たらぬ白髪の老婆が私を恋しているらしい
そんな姿が幻のやうに見へてくる


と出発する様子を見て 女は茨やからたちの刺にひっかかり
ながら家に帰ってきて横になった 男は先ほど女がしたやうに
こっそり立って様子を伺っていると 女は待ち遠しさに
嘆いて一人寝るといふ訳で


むしろの上に衣の片方を敷いて 今夜もまた恋しい人に
逢はないで 空しく独り寝をするのか


と詠んだので 男は可哀相に思って その夜は女のもとで
寝たのであった 男女の仲の例として いとしく思ふ相手を
愛し いとしく思はない相手は 心にとめないのに
この男 業平は いとしく思ふ女も 思はない女も差別しない
思ひ遣りのある心をもっていた

世心つける女 = 好色な女・「世」は男女の仲
いかで = 何とかして・どうにして
  「あひ得てしがな」に掛かる
心なさけあらむ = 情愛のある
あひ得てしがな = 巡り逢ひたいものだ
たよりなさに = きっかけがないままに
まことならぬ = 作り事の
情なく = そっけなく・同情心もなく
いらへて = 答えて
三郎なりける子 = 三番目の子
よき御男ぞ出でこむ = 立派なお相手が現れることでせう
あはするに = 夢合はせをする・夢解きをする
気色いとよし = 大変機嫌が良かった
こと人はいと情なし = 他の人(業平以外の人)は全く情愛が
  ない(と三郎は心の中で思った)
在五中将 = 在原業平
逢はせてしがな = 男女の契りを結ばせてあげたい
狩しありきけるに = 業平が鷹狩しているのに
行きあひて = 出会って
かうかうなむ思ふ = 母の願い通りに逢って欲しいの意
あはれがり = 三郎の孝心に同情して
垣間みける = 垣間見る・密かに覗き見る
ほのかに = ちらっと  百年に一年たらぬ = 九十九歳
つくも髪 = 九十九歳の髪
うばらからたちにかかりて = 近道を急いで帰らうとした為
  茨や鋭い刺のある木に引っかかる様子
さむしろ = 粗末な莚・寒しを掛けている
けぢめ見せぬ心 = 老若美醜に拘泥しない心

いやはや業平とは凄い人だったのですねぇ
でもきっと心根の優しい人だったに違いありません

  金なくも せめてなりたや業平に

ところで この老女は本当に九十九歳だったのでせうか
いいえ 勿論 歌の上での誇張です
では何歳くらいだったのでせうね



古今集 巻十四 恋歌四 689 読人知らず
  さむしろに衣かたしきこよひもや
    我を待つらむ宇治の橋姫

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ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
    この写真は但馬皇女の歌
    人言を繁み言痛み己が世に
      未だ渡らぬ朝川渡る

    をイメージしたものです

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