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伊勢物語(九十八段)

伊勢物語(九十八段)
  むかし おほきおほいまうちぎみと聞ゆる おはしけり
  仕うまつる男 九月ばかりに 梅のつくり枝に雉子をつ
  けて 奉るとて

わがたのむ君がためにと折る花は
  ときしもわかぬ物にぞありける


  とよみてたてまつりたりければ いとかしこくをかしが
  り給ひて 使に禄たまへりけり

むかし 太政大臣と申す方が おいでになった お仕えして
いる男が 九月頃に 梅の造花に雉子をつけて差し上げると
いふことで


私が頼りにしている ご主人のために と折る花は ご覧の
通り 季節も問題とせず咲くものでござひます


と詠んで差し上げたので たいそう深く満足がられて 使ひ
の者に褒美をお与へになった

おほきおほいまうちぎみ = 太政大臣 「おほいまうちぎみ
  に」更に「おほき」を冠した言ひ方  藤原良房
仕うまつる男 = 公職にある業平としては太政大臣の部下に
  当る 良房の使用人といふ意ではない
ときしもわかぬ = きし(雉子)もわかぬ 贈り物の雉子を
  詠み込んでいる

古今和歌集 卷十七 雑歌上 866 に関連歌があります
題しらず 読人不知


かぎりなき君がためにと折る花は
  時しもわかぬものにぞありける
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伊勢物語(九十七段)

伊勢物語(九十七段)
  むかし 堀河のおほいまうちぎみと申す いまそかりけ
  り 四十の賀 九条の家にてせられける日 中将なりけ
  る翁

さくら花 散り交ひ曇れ老いらくの
  来むといふなる道まがふがに


むかし 堀河の大臣と申し上げる方がいらっしゃいました
四十の賀を九条の別邸で催された日 中将であった翁が次の
歌を詠んだ


桜花よ 散り乱れてあたりを曇らせよ 老がやってくると
いふ道が分からなくなるくらいに


堀河のおほいまうちぎみ = 堀河の大臣・藤原基経
  二条の后(高子)の兄
いまそかりけり = いらっしゃった・「いる」の尊敬語
四十の賀 = よそじのが 四十歳を初老といひ 長寿を祝ふ
中将なりける翁 = 業平を指す

古今集 巻第七 賀歌 349 には次のやうにあります


  堀河のおほいまうちぎみの四十の賀
  九条の家にてしける時によめる  在原業平朝臣


桜花散りかひ曇れ老いらくの
  来むといふなる路まがふがに

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ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
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      未だ渡らぬ朝川渡る

    をイメージしたものです

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