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川隈の屎鮒

万葉集 巻第十六 由縁ある雑歌

  長忌寸意吉麻呂が歌八首

16-3828 香塗流塔尓莫依川隈乃 屎鮒喫有痛女奴
16-3829 醤酢尓蒜都伎合而鯛願 吾尓勿所見水葱乃煮物

  香 塔 厠 屎 鮒 奴を詠める歌

香塗れる塔にな寄りそ川隈の
  屎鮒食めるいたき女奴


  酢 醤 蒜 鯛 水葱を詠める歌

醤酢に蒜搗き合てて鯛願ふ
  我にな見せそ水葱の羹


香を塗り込めたほど香の高い塔には近寄るな
厠のある川の隅に集まる屎鮒を喰ってひどく臭ふ女奴め


醤に酢を加へ蒜をつき混ぜたたれを作って鯛が欲しいと
願っているこの私に水葱の羹など見せないでくれ


香 = 仏前で焚くお香
厠 = 川隈・便所・川の隅で用を足すことが多かった
屎鮒 = くそふな・川隈の鮒を蔑む語としている
女奴 = めやっこ・寺などで使役された身分の低い女
醤 = ひしほ
蒜 = ひる・葱に似た野菜
水葱の羹 = なぎのあつもの
「香塗れる」は気高い香りと不浄な匂ひを取り合せた歌
「醤酢に」の原文の「葱」の字は原字では
  草冠に「公」そしてその下に「心」

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