こけるから
2006/10/18 (Wed) 12:28
むかし 年ごろおとづれざりける女 心かしこくや
あらざりけむ はかなき人の事につきて
人の国なりける人につかはれて もと見し人の前に
いで来て 物食はせなどしけり
夜さり 「このありつる人たまへ」とあるじにいひければ
おこせたりけり 男 「我をば知らずや」とて
いにしへのにほひはいづら桜花
こけるからともなりにけるかな
といふを いと恥づかしと思ひて いらへもせでゐたるを
「などいらへもせぬ」といへば「涙のこぼるるに
目も見えず ものもいはれず」といふ
これやこの我にあふみをのがれつつ
年月経れどまさり顔なき
といひて衣脱ぎてとらせけれど 捨てて逃げにけり
いづち去ぬらむとも知らず
COMMENT
小林秀雄(←字は合ってるのかしら)の伊勢物語から取材した創作短編にあった気がします。
とても寂しい悲しい女の物語で、読後もずぅぅぅぅっと切なく心に残っていました。
女はこの邂逅で急死してしまいます。
古代のつつましい女の姿が薫物の香りと共にゆらゆらと立ち会われる.....そんな物語でしたが。
現代語は なし
この段に限って 原文のみを掲載しました
掲載しないことも考へたのですが
作者の意図するところが別にあるのかも・・と

























