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伊勢物語(百十七段)

伊勢物語(百十七段)
  むかし 帝 住吉に行幸したまひけり

我見ても久しくなりぬ住吉の
  岸の姫松いく代経ぬらむ


  御神 現形し給ひて

むつましと君は白浪瑞垣の
  久しき世よりいはひそめてき


むかし 帝が住吉神社に行幸なさった

私が見てからでも久しくなったが この住吉の岸の美しい松
は どれほどの年を経ているのだらうか


住吉の神様が姿を現されて

私と親しい間柄にあると あなたはご存じないかも知れない
が 私はずっと以前からあなたを祝福し始めていたのですよ


姫松 = 松の美称
現形し給ひて = (げんぎょう) 神仏が姿を現すこと
白浪 = 白浪 と 知ら無み の掛詞
瑞垣 = 久し の枕詞


古今集 巻十七 雑上 905 題しらす 読人不知
われ見ても久なりぬ住吉の
  きしのひめ松いくよへぬらむ

新古今集 巻十九 神祇(じんぎ)歌 1857
むつましと君はしらなみみつかきの
  ひさしき代よりいはひそめてき

伊勢物語(百十六段)

伊勢物語(百十六段)
  むかし 男 すずろにみちの国までまどひいにけり
  京に思ふ人にいひやる

浪間より見ゆる小島の浜びさし
  久しくなりぬ君に逢ひみで


 「なにごともみなよくなりにけり」となむいひやりける

むかし 男が確かな目的もなく 陸奥の国まであてもなく出
かけて行った そして都にいる愛人に歌を送った


あなたにお目にかからなくなってから 随分久しくなりました

万事好転してきました と言い送った

みちの国 = 陸奥の国 東北地方一帯
浪間より見ゆる小島の浜びさし = 全て「久し」にかかる

この歌は万葉集からの借り物


万葉集 巻第十一 寄物陳思 11-2753

浪間従 所見小嶋 濱久木 久成奴 君尓不相四手
波の間ゆ 見ゆる小島の浜久木 久しくなりぬ君に逢はずして

伊勢物語(百十五段)

伊勢物語(百十五段)
  むかし みちの国にて 男 女 すみけり 男「都へいな
  む」といふ この女 いと悲しうて 馬のはなむけをだ
  にせむとて おきのゐで都島といふ所にて 酒飲ませて
  よめる

おきのゐて身を焼くよりも悲しきは
  都しまべの別れなりけり


むかし陸奥の国に男と女が住んでいた 男が「都へ帰りま
す」と言ふ この女は大層悲しく思ひ せめて別れの宴だけ
でもしゃうと 沖の井出 都島という所で 男に酒を飲ませ
歌を詠んだ


熾火(おきび 赤く焼けた炭)が身にくっいて身を焼くのは辛
いけれど それ以上に悲しいのは都と島辺とに別れ別れにな
ることです


みちの国 = 陸奥の国 東北地方一帯
ゐて = 身にくっついて

この歌は古今集に小野小町の作としてある物名歌

伊勢物語(百十四段)

伊勢物語(百十四段)
  むかし 仁和の帝 芹河に行幸し給ひける時 いまはさる
  こと似げなく思ひけれど もとつきにけることなれば
  大鷹の鷹飼にてさぶらはせ給ひける 摺狩衣の袂に 書
  きつけける

翁さび人なとがめそ狩衣
  今日ばかりとぞ鶴も鳴くなる


  おほやけのみけしきあしかりけり おのがよはひを思
  ひけれど 若からぬ人は聞きおひけりとや


むかし 仁和の帝が芹河に行幸なさったとき 今は年老ひて
さういふことは似合はないと思ったけれど 以前は従事して
いたことである関係で 大鷹の鷹飼として供をおさせに
なった その時着ていた摺狩衣の袂に書きつけてあった歌


年寄りくさい私が摺染の狩衣を着ているのを 人々は咎めて
下さるな 獲物になる鶴も 今日限りの命と鳴いているのが
聞こへますが 私が派手に振舞ふのも あれと同じく 今日限
りのことですから


天皇の御機嫌は悪かった 歌の読み手としては 自分の年齢
を思っての歌だったが 若くない天皇は 自分のこととして
聞いたとかいふことだ

仁和の帝 = 光孝天皇
みけしき = 御気色
大鷹 = 冬の鷹狩り 小鷹 = 秋の鷹狩り
摺狩衣 = 模様を摺った狩衣
若からぬ人 = 伊勢物語作者は何故か意地悪く表現している
聞きおひける = 自分のこととして聞く (百八段にも)
光孝天皇の芹河行幸は886(57歳) 業平没はその約6年前

伊勢物語(百十三段)

伊勢物語(百十三段)
  むかし 男 やもめにて居て

ながからぬ命のほどに忘るるは
  いかに短き心なるなむ


むかし 男が妻と別れて一人暮らしでいた

長くもない命の間に私を忘れてしまふとは 何と短い心で
あらうか


やもめにて = ここでは死別ではなく 妻に振られた状態

伊勢物語(百十二段)

伊勢物語(百十二段)
  むかし 男 ねむごろにいひ契りける女の ことざまに
  なりにければ

須磨の海人の塩焼くけぶり風をいたみ
  思はぬかたにたなびきにけり


むかし 男が心をこめて契りを交していた女が 他の男に
心を移してしまったので


須磨の海岸の海人の塩を焼く煙は 風が強いので 思ひも
かけぬ方向に なびいてしまったよ


ことざまに = 別の方向を向いてしまふこと
   他の男に心を移してしまったのです

伊勢物語(百十一段)

伊勢物語(百十一段)
  むかし 男 やむごとなき女のもとに なくなりにけるを
  とぶらふやうにて いひやりける

いにしへはありもやしけむ今ぞ知る
  まだ見ぬ人を恋ふるものとは


  返し

下紐のしるしとするもとけなくに
  かたるがごとは恋ひずぞあるべき


  また 返し

恋しとはさらにもいはじ下紐の
  とけむを人はそれと知らなむ


むかし 男が身分の高い女のもとに 亡くなった人を弔ふ
ふりをして 歌を贈った


昔はあったことかも知れないが 私は今はじめて経験しまし
た まだ逢ひもしない人を恋ひ慕ふことがあるものとは


下紐が解けるのは慕はれている証拠だと聞きますが その下
紐も解けないのを見ると お言葉ほどには私をお思ひではな
いに違ひありません


恋しいなどとは再び言はないことにしませう 下紐が自然
と解けるのを 私の思ひと知って下さい


下紐 = 下着の紐だけでなく 衣服の表に出ない紐も下紐

伊勢物語(百十段)

伊勢物語(百十段)
  むかし 男 みそかにかよふ女ありけり それがもとよ
  り 「こよひ夢になむ見えたまひつる」 といへりけれ
  ば 男

思ひあまり出でにし魂のあるならむ
  夜深く見えば魂むすびせよ


むかし 男が ひそかに通っている女がいた その女のもと
から 「今宵あなたが夢に現れました」と言って来たので
男は

    
あなたのことを思ふあまりに 身を抜け出していった魂があ
るのでせう 夜が更けてから見えたなら魂結びをしてあな
たの所に留めていて貰ひたひ


魂結び = 魂をつなぎ止める まじなひ
夜深く見えば = 夜おそくには 私は行けないから
   私の代りに魂を止めておいて下さいね

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ちゃむ

  • Author:ちゃむ
  • 1940.01 生まれ 男性
    この写真は但馬皇女の歌
    人言を繁み言痛み己が世に
      未だ渡らぬ朝川渡る

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